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Home / モリテツのスペイン紀行 ❺「まずはマラガ・タパスで……」(マラガ1)

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Date: Aug 4, 2020
Author: 編集部 142 コメントはまだありません

翌朝、午前8時40分発バルセロナ行きのスペイン特急AVEに間に合うようサンタ・フスタ駅へ。案内カウンターで乗り場を聞くと、「遅れるかもしれない。でも心配無用」とごま塩頭の駅員がおっしゃる。なんと、30分遅れて到着したら乗車料金全額払い戻し。15分遅れても半額を返してくれると言う。

「ぜひ遅れてほしい」と貧乏根性丸出しでがら空きの列車に乗り込んだものの、マラガのマリア・サンブラーノ駅に定刻ぴったりに到着。残念!

駅前からクアルテレス通りをぶらり歩いた。人口59万人。コスタ・デル・ソル(太陽海岸)といわれる地中海沿岸の暖かな天候 ~平均気温19度、300日以上青空~ が寒い英国人やドイツ人に人気を呼んで移住者が増え続けているとか。

グアダルメディナ川の橋を渡って、1㌔ほど歩いたか、マリーナ広場に着いた。港から200㍍も離れていない。

今日のお宿は1泊2,500円の「ザ・ライツ・ホステル」。広場より手前にあり、街路樹が見事な街中。清潔なベッドに設備が整った広いキッチン。屋上にはテラスと申し分ない。5ユーロで夕食もOK。

ひと風呂浴びて、目の前にあるアタラサナス中央市場に出かけた。19世紀の建物を利用した歴史的建造物だそうだが、新鮮な青果物が並ぶ。

市場といえば、欧州はじめ外国では卸業者専用ではなく、むしろ個人向けの傾向が強く、イスタンブール、タシケント、カイロなど、どこの市場も地元の主婦や観光客で賑わい、レストランや立ち食い店も揃っている。

ここもほっつき歩いていると、ついつまみ食いしたくなるFoodがずらり。なんといっても、マラガはスペインきってのタパスの本場。新鮮な食材が揃う市場ならさらにグレードアップか。

タパスの語源は「蓋」という意のタパ。一種の小皿料理で店によっては無料で出す。日本版お通しでもある。

スペイン国王がその昔、「居酒屋たるもの、必ず食い物を出すべし」との勅令を出したほど酒と食べ物への執着は強いお国柄。生ハム、チーズ、オリーブ、イワシなど肉に魚介類、野菜、果物となんでもござれで、温・冷菜、乾き物などさまざまに工夫した料理でまさにつまみ食いにぴったり。といっても結構な量である。日本のように100㌘何円とか決まりがなく、好きなだけ自由に選べるのも良い。イベリア半島の山岳地で育った白豚産のハモン・セラーノを数切れ。天然のドングリの実を食べて育った黒豚を2年以上熟成したとされる高級なハモン・イベリコも3切れぱくついた。グラスに注いでもらった赤ワインが旨すぎます。

市場を出てガイドマップを見ていたら、マラガの老舗として名高い「カフェ・セントラル」もすぐそば。ZARAに寄り道してTシャツを買い、路地を歩いていくと、グラナダ通りとサンタ・マリア通りの交差点近くにクラシカルな構えのカフェがあった。

ここでは出されるコーヒーは、なんと、70年前に飲んだものと変わらぬ味との評判。同じサプライヤーが同一の品質を保ち続けて供給しているからだとか。

店のコーヒーを紹介したポスターが格式高く、ユーモラスでもある。テーブルにつくと、隣の老人がどぎついチョコレートにチュロスをつけてもぐもぐ。「いい年して糖尿病は大丈夫かや」と余計な節介をしつつ、好奇心につられてつい注文。チョコラテ・コン・チュロスというらしい。意外にチョコレートの甘さがきつくない。下手すると、酒のつまみになるかも、とテーブルを見渡すと、やっぱりワイングラスを傍らに置いたオヤジがいた。目が合うと、ウインクされてしまった。

森哲志(もりてつし)

作家・ジャーナリスト。日本エッセイスト・クラブ会員。国内外をルポ、ノンフィクション・小説を発表。『もしもし』の「世界旅紀行」は、アフリカ、シルクロードなど10年間連載中。著書近刊に退位にちなんだ「天皇陛下・美智子さま、祈りの三十年」(文藝春秋社・2019.4月刊)。月刊「文藝春秋」2019.4月号に「天皇に招かれた被災地の花屋さん」掲載。「団塊諸君一人旅は楽しいぞ」(朝日新聞出版刊)など著書多数。

森哲志公式サイト
mtetu@nifty.com