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【Tama Hito 09】濱住 真至さん

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Date: Aug 4, 2020
Author: 編集部 449 コメントはまだありません

稲城の土のみで仕上げた稲城焼
それまでの思いも込めて

諦めるのは
意味がわからない

稲城市坂浜。鶴川街道の「駒沢学園入口」交差点を少し稲城駅に向かって三沢川を渡ってすぐ。看板を目印に左に入ると、右側に出てくる『濱陶器』。ギャラリーと窯、工房を併設した「ええ!? ここは東京?」な空間が広がります。そして、ここで陶器作りをしているのが濱住真至さんです。

稲城市立病院で生まれて、3歳で川崎市から稲城市に。以来、ずっと稲城暮らし。「ちょっと遊んでしまった」という高校生時代を経て、さまざまことが重なって、心の病を抱えます。苦しい日々を過ごしていた中、お父様に誘われて出会った陶芸家に「土を触ってみる?」と言われ、抹茶茶碗を作ったのが「陶芸」との出合いでした。

「土を触っていたときだけ落ち着くことができたんです。『これだ!』と感じ、とにかく生きていくために、土を触り続けていました」

陶芸に出合って2年が経った頃。焼き物の産地を訪れたり、ひたすらロクロの練習したりを重ね、師匠のもとで学ぶ日を過ごすように。

「なかなかうまくできない、やれない…と、周りで挫折していく人もいましたが、自分にとっては、今やっていることを諦めるのは意味がわからなかったんですよね、とにかくやり続けるしかなかったので。ひたすらできるまで練習して、できるまでやり続けて…、の繰り返しでした」

二人目となった師匠からは、「あなたは陶芸家になる人だから、陶芸家になるために必要なことを全て教えます」と作陶のいろはから個展開催のあれこれ、販売、発送など、全工程を師匠と一緒にやりました。

その中で、真至さんは、現在の地に工房を借りることを決意します。けれど、「自分のスタイルがゼロだった、力がないってことに気づいたんです」と。

以来、工房の家賃を払うために昼はアルバイト、そして、夜に陶芸に打ち込む毎日を過ごします。そんな日々を重ねる中で、陶芸展で受賞・入選を果たし始め、家族や親戚にも、その生き方を認められるようになっていきます。

府中市の陶器店『白土陶舎』に、自作の器を持ち込んだのもこの頃でした。

「『ここに置かせてもらえたら良いな』と思いましたが、他の方の作品を見て、『やっぱり帰ろう…』と。でも、『無理で当たり前、ならやってみよう』と思い直して、社長さんに会っていただきました」

最初に写真を見せて、「実物を持っておいで」と言っていただき、衣裳ケースいっぱいに詰め込んで持参しました。
「そうしたら、『バカ野郎、そんなに持ってくるんじゃないよ! でも嬉しい』と言ってくださり、その場で検品。全て買い取ってくださったんです」

その後、真至さんのスタイルを作り出すために、ダメだしやアドバイスをたくさんもらい続けます。その繰り返しで、他の人では作れない「濱住真至」の陶器の世界が作り上げられていったのです。

稲城の土を使った稲城焼
これまでがつまっています

「そんな中で、稲城の土を使って焼いてみたい、との思いが高まりました」

それが、稲城焼作りのスタートでした。

実は70万年前は、稲城の地は海だったという話もあるそうです。そしてその昔、稲城には“玉川焼”という焼き物がありました。さらに、縄文土器がたくさん発掘もされています。ならば、必ず焼き物に使える土があるはずだと思ったのです。

「『何焼きですか?』と聞かれても、産地の土を使っていないと答えられない。まったく知識もない中でのスタートでしたが、いろいろ研究していく中で、『あ!不思議な焼き物ができる。稲城の土はすごい!』と思ったんですよね」

真至さんは、稲城の土がありそうな場所を訪ね回り、土地の人と話をし、土を譲ってもらっては焼いてみて…、を何度も重ねます。何度も何度も。

「試し始めたら、どんどんおもしろくなって…」

1,250度という高い焼成温度に耐えて焼き上げられる稲城焼。他所の土を一切混ぜることなく、稲城の土のみで作り上げています。その稲城の土には鉄分が多く含まれ、とても堅く焼き締まるのだと言います。

鈍く光る稲城焼には、真至さんのこれまでがつまっている、そんな気がします。ぜひ、自分の目で感じていただきたいな、と思います。新型コロナウイルス禍が終息した暁には、ぜひ、ギャラリーに足を運んで、ご覧ください。

【プロフィール】

1977年稲城市立病院生まれ。3歳で稲城市に転入。以来、ずっと稲城で育つ。高校卒業後、心身の不調と向き合う日々を過ごす。その中で陶芸と出合い救われていく。1997年、陶芸家・川下善靖氏、画家・小根山幸子氏に師事。2003年、陶芸家・花原ひろ子氏に師事。むさしの陶芸展入選、陶芸財団展優秀賞受賞、全陶展入選を重ねる。2013年、稲城市坂浜に工房兼ギャラリー『濱陶器』をオープン。※『濱陶器』の陶器は、『コーチャンフォー稲城若葉台』でも取扱い中です。

『濱陶器』
稲城市坂浜3216
Tel.042-350-3197
https://hama-touki.jimdo.com

ギャラリーの後ろには、棚田、雑木林が広がり、開放感たっぷり。
隣りの『坂濱ベース』との間に作ったウッドデッキに椅子を並べて、のんびりするのも至福の時間に。

柱時計の音が耳に心地よいギャラリーには、さまざまな表情を見せる陶器作品がぎっしり並ぶ

渋さの中にも温かみがあふれる「稲城焼」。指ではじくと、“キーン”と澄んだ金属音がします。