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【Tama Hito 16】石塚 久美子さん

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Date: Sep 18, 2020
Author: 編集部 152 コメントはまだありません

伝統の〝江戸小紋〟と、
新たな着物の魅力を伝えたい

明治23年創業『石塚染工』
匠の技は父から娘へ

同じ柄を繰り返し染める型染めの小紋。中でも「江戸小紋」はその極み、細かくて繊細な文様の美しさは思わず息をのむほど。
発祥は室町時代。贅沢が禁じられた江戸時代には、大きくて豪華な文様ではなく、遠目に無地に見える江戸小紋が大きく発展しました。
そんな江戸小紋の伝統を今に伝えようと奮闘するのが、八王子で130年の歴史を持つ『石塚染工』五代目・石塚久美子さん。父で四代目の石塚幸生さん(伝統工芸士、瑞宝単光章)との工房での日々は今でも試行錯誤の連続です。
家業の染めの仕事を幼い頃から見てきた久美子さん。いずれは引き継ぎたいと考えてきました。絵や手仕事が好きで、大学では日本画を専攻。
「弟子入りを父にお願いしたのは大学卒業時。でも断られました。甘い世界じゃない。まずは社会勉強をと」
いったんはアパレル会社に就職。しかし諦めきれず改めて弟子入りを懇願。2年越しに願いが実現しました。最初は、浴衣や手ぬぐいなど大きな柄から修業し、少しずつ江戸小紋も手がけるようになりました。
型彫師によって生み出された精巧な伊勢型紙を用い、微細な文様を染める伝統的な技法。細かい柄ほど職人の技術が表れ、ごまかしがきかないといいます。現在、機械捺染が多くなる中、手つけの染め技から蒸し・水元・地直し迄を一貫して行う『石塚染工』の仕事は貴重です。それだけに久美子さんには伝統を継承するプレッシャーも。
「どれだけ修業すれば父のようにできるようになるのか…それがわからない厳しさがあります。ただ日々挑戦の中、できなかったことができるようになることが楽しみでもあります」

着物に馴染みのない人にも
新たな試み〝創作小紋〟

日々の制作の中、伝統の染め物をアピールするための新たな試みも始めました。着物に馴染みのない人にも手に取ってもらいたいと、従来の江戸小紋の概念にとらわれず、明るい色合いの“手ぬぐい”や“浴衣”、数種の型紙を組み合わせて作る独自の柄の制作等、自身のブランド「形梅」で取り組んでいます。
「お客様の声を聞く機会が増えてきたのも刺激になっています」
この試みと同時に、久美子さんにはもう1つ、大きな目標があります。
「父のように難しい柄を染められるようになりたいですね。江戸小紋の中でも特に細かな文様の『極鮫』とか」
久美子さんの手がける美しい江戸小紋、その染め上がりが楽しみです。

 

【小紋のできるまで】

染め師である久美子さんの制作は、②色糊の調整から。

①形彫師による型紙の制作
良質の和紙を2~3枚、柿の渋で張り合わせた”地紙”に図案を写し、錐・小刀・道具を使って模様を彫る。

②色糊の調整
米ぬかと糯粉(もちこ)と塩等を混ぜた糊に、染料を入れ試験染めをしながら目色用・地色用の色糊を作る。

③型付け
長板に白生地を張り、その上に型紙をのせ、ヘラで防染糊を置いていく。型紙の彫り抜かれた部分だけ文様が生地に型付けされます。
染めの最も重要な部分です。

④板干し
型付けができたら、貼り板のまま防染糊を乾かす。
※多色の柄は繰り返しで型付けをする。

⑤地色染め(しごき)
型付けされた防染糊が乾いたところで、生地を板からはがし、染料の入っている地色糊を全体に平均にのせて地色を染める。
これをしごきという。

⑥蒸し
地色糊が乾かないうちに蒸箱に入れ、摂氏90度~100度で、絹は15分~30分位蒸す。
糊の中に入っている染料を生地に定着させるためで、蒸し加減は熟練を要します。

⑦水洗い
蒸し上がった生地は、糊や余分な染料を落とすため念入りに水洗いする。

⑧乾燥仕上げ
水洗いされた生地を乾燥させ、湯のしで幅をととのえる。

⑨地直し
幅をととのえた後、染め上がりに問題がないか全体をよく見てハケや細い筆を使ってムラがなくなるように直しようやく染め上がります。

 

▲微細な文様が美しい「江戸小紋」

【プロフィール】
2009年、女子美術大学日本画科卒業。アパレル会社勤務を経て、2011年、父・石塚幸生氏に師事。現在は自身のブランド「形梅」も展開。
2児の母でもある。

『石塚染工』
八王子市元横山町1-16-1 ☎042(642)4400 [HP]https://tokyokomon.jp  [Instagram]@komonishizuka