モリテツのキューバ・南米紀行7「再び巨匠を偲んで2」 (ハバナその7)

四年後、ハバナ事情に詳しいキー・ウエストのバー店主、ジョー・ラッセルと海釣りのためハバナを訪れ、漁師や乗組員、賭博師、富クジ売りら泥臭く生きる地元の男たちの人生模様に強く惹かれたのが、ヘミングウェイがハバナに居つく一因ともされている。
その時の宿がホテル・アンボス・ムンドス。オビスポ通りの一角にあるそうで、彼はここを執筆部屋として愛用した。
翌日、早速、卓司氏と奈津希嬢の三人連れで出かけてみた。執筆部屋の511号室は今や貴重な観光資源。部屋の前には肖像額も架けられ、二人がおどけてポーズ。すぐ脇に巨匠愛用のタイプライターも。
仕事部屋とはいえ、わずか16平方㍍。ありたきりの木製ベッドにナイト・テーブルとイス付きのデスクがあるだけの殺風景な部屋である。ただ窓からコロニカル風の壮麗なスペイン総督官邸(現市立博物館)やエントラーダ運河を行き交う貨客船が望めて見晴らしは良かったらしい。しかし、令嬢のポーリンにはこの陰気な部屋は我慢ならず、ヘミングウェイを捨てて立ち去ってしまったのだった。
今で言うモテ男だったのだろう。たまたま家族とキー・ウエストに遊びに来た才女と知り合う。マーサ・エリス・ゲルホーン(89歳で没)。ルーズベルト夫妻にホワイトハウスに招待されるほど著名な従軍ジャーナリスト。ヘミングウェイも従軍記者の経験はある。気が合った二人は雑誌社のスペイン内戦取材に出かけ、四年間の同棲を経て結婚。
- ホテル・アンボス・ムンドス
- 511号室前には肖像画も
- ヘミングウェイの部屋
- 実物のタイプライターも
- 旧スペイン総督邸
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