漢方コラム(115)香りの漢方
漢方薬の原料の生薬は、独特の香りがあります。この香りや味が苦手でオブラートに包んで服用する方もいますが、わざと噛んで香りを感じながら服用する漢方薬があるのはご存じですか? 例えば、牛黄清心丸(ごおうせいしんがん)や敬震丹(けいしんたん)など、動悸・気付けに使う漢方薬です。竜脳(りゅうのう)、麝香(じゃこう)、沈香(じんこう)など、香水やお香にも使われる特別香りの強い生薬が配合されています。
香りの成分は、消化管から吸収されてから作用を発揮する成分と違い、嗅神経から直接脳へ働きかけるので、作用が早いです。シャーマニズムで香りが多用されるのは、瞑想状態に入るために、脳がリラックスする香りが役立つからです。緊張しているときやストレスを感じたときに、そのような漢方薬を噛んで服用し、興奮状態を落ち着かせます。初めて噛んだときは、その味と香りにびっくりしますが、ストレス社会で役立つ、効き目の良い漢方薬です。