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モリテツのスペイン紀行26 「モナリザ・ミステリーの山」(バルセロナその5)

なんとも国際色豊かな旅は道連れ組だ。カナダのベン、ポルトガル・マデイラ島のマテウス、ドイツのケイル、台湾の美帆、イタリアのエミリア、フランスのクレマン……。

ケイル・美帆嬢はシティバスツアーに出かけた。2時間、35ヶ所のバス停を乗り降り自由で30ユーロ。いつも賑やかなカタルーニャ広場まで一緒に。

夕方は宿でテーブルを囲んで賑やかに夕食。今宵は豪華なボカティージョ(サンドイッチ)。東京の自宅でも白飯よりバタールのブレッド派。ここではバタールなど100円もしない。包装も手軽で歩きながらつまむ人もよく見かける。菓子パンも安い。スペインはパン好きにはたまらない。

テーブルは明日の予定で盛り上がっている。このところ自分で行き先を考えず、誘われてばかり。主体性がないなあ、と思いつつ楽しけりゃいいだろうと開き直りだ。

シャンパン醸造家のクレマンさんは、スペイン版スパークリングワイン・カヴァ(CAVA)のワイナリーをぜひ視察したいという。バルセロナ近郊サン・サドゥルニ・ダノヤという40㌔ほど離れた村で観光地でも知られている。

すると、マテウス君が「それならそこから奥に20㌔のモンセラットにも行けばいいじゃないか」と提案。モンセラットはここカタルーニャ地方の聖地。それを聞いたエミリアが真っ先に行こうと宣言。話しぶりだと奇妙な岩山があるらしい。

翌朝、レンタカーを借りてケイル君の運転で5人で出かけた。言い出しっぺのマテウス、ベン両君は仕事で不参加。地図で見ると三角形ルートでほぼ100㌔のドライブ。

〝Cava〟はカタルーニャ語で洞窟。地下の洞窟で熟成させることからこの名がついた。ワイナリー「Codorniu(コドルニウ)」は風格がある重厚な建物。ひんやりする醸造庫は洞窟のイメージなど全くない。霜降り酒? がずらりと並んで壮観。クレマンさんは仏語ができるスタッフに質問責め。カヴァの瓶でグリーン鮮やかな洒落た照明が目を惹く。

そこからE90号線と高速A2号で14㌔、30分もかからずにモニストロル・デ・モンセラット駅に着いた。ここからは登山鉄道に乗り換え、ケーブルカーで頂上に向かう。

なるほど奇妙な形の岩山である。別名鋸山。古代の地殻変動で湖が隆起して誕生。フランコ独裁政権時代、禁止されたカタルーニャ語で唯一ミサを続けた抵抗の教会。心の故郷と今も親しまれているとか。なんとバルサの女の子の名前でモンセラットは人気No.1だと。岩山の中腹にあるサンタ・マリア・モンセラット修道院には黒マリア像がある。列に並んで拝観だ。

実は黒いマリア像は、レオナルド・ダ・ヴィンチのモナリザに重大な影響を与えたという興味深い逸話がある。

ダ・ヴィンチは1481年から1年余、伊・フィレンチェから消息を絶った時期があり、その間、親戚がいるバルサを訪ね、モンセラットにも寄ったというのだ。

そこで目にしたマリア像の微笑に強いインスピレーションを受けたという。一説には両者の表情は酷似しており、このマリア像も見る角度で表情が異なるという。試してみたけれど、鈍感な私には確認できなかった。が、イタリア出身のエミリアは「ウオッ!」と歓声をあげて喜んでいる。

「モナリザも黒服でしょう。絵の背景にある山はここなのよ」と興奮気味。

揃ってスマホでモナリザを確認。確かに言われた通りで山の形も似ている感じ。果たして本当なのか? しかし、こんなミステリーに出会えただけで来た甲斐はありました。

 

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