Tama Hito 60
小亀 たく さん
「夢を叶えたいなら動こう 僕だからできることがある」
実話を基に描いた絵本が最優秀賞受賞、出版も!
86歳のじーさんのお葬式の翌日、ずっと一緒に暮らしていた文鳥のぴーぽっぽは、じーさんの娘のけーこの手のひらの温かさに包まれながら、じーさんのところへ飛び立ちました。絵本『じーさんとぴーぽっぽ』で綴られる話。生きるってどういうこと? 身近な人がいなくなるって? そんなあれこれを見つめさせてくれる、実話を基にした一冊で、その作者が小亀さんです。
読者からは「今、目の前にいる鳥が愛おしく思えて」「自分に置き換えて、自分の周りの命を大切にしたいと思う」などの感想が寄せられています。
「義父と文鳥の思い出を妻と語っているうちに、自然な流れで描き始めていました。美大を出てからずっと描いてなかった絵を久しぶりに描いた時、〝ああ、そういえば、俺、図工が好きで、将来の夢はイラストレーターだったな〟と思い出したんです」
そして、出版を願うようになります。
「そこで、いろいろ調べて、出版のチャンスがあるコンクールに応募することにしました」
修正を重ねた三度目の正直で、『みらいパブリッシング』主催「第8回絵本出版賞大人向け絵本部門」最優秀賞を今年1月に受賞、7月に出版されました。
自分だからできることを、やっていけたら
小亀さんは、グラフィックデザインや広告の企画制作の世界でずっと仕事をしてきました。
「役員も15年くらいやっていて、好きな会社だったんですよ。でもなんだか会社の新陳代謝が悪いなあと。若い世代が中心でないと勢いがなくなる。よし、次に譲ろう! そう決めて、昨年の8月いっぱいで退職しました」
「自分でなければできないことをコツコツとやっていこう」と思い、新たなスタートを切った、そのタイミングでの絵本の執筆でした。
「広告の仕事は、クライアントさんの思いを伝える媒介的なもの。でも、これからは自分のメッセージを自分で伝えていくようにしたいですね」
2作目も考えながら、会社員時代から模索していた地球温暖化対策に貢献できるデザインにも取り組んでいます。
「絵本の執筆を通して、この半年で、実に多くの新しい人との出会いが重なってきました。やれること、やりたいことがどんどん拡がっています。自分が描いていた夢、それを叶えたいなら動こう、そう思います」
静岡で開催された『じーさんとぴーぽっぽ』絵本原画展の様子
プロフィール
1963年徳島市生まれ。武蔵野美大進学を機に上京。卒業後、グラフィックデザイン事務所を経て、広告の企画制作に携わり、2021年に早期退職する。同じ頃から絵本の創作に取り組み、『じーさんとぴーぽっぽ』を上梓(市内書店やネットで購入できる・税込1,540円)。現在、2作目も含め、地球温暖化対策に貢献できるデザインを模索中。多摩市在住。