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TamaHito 48
影近 卓大 さん
誰もが地域に溶け込んで、ありのまままで暮らせるように

地域側にある障害をなくすことで、皆が暮らしやすい地域に

「地域で暮らしたいと願う全ての人にサービスを届けたいんです」と話すのは影近卓大さん。

2015年に、多摩市永山で、『合同会社ライフイズ』を立ち上げ、年齢も状態も問わずに対応する『訪問看護リハビリステーション ラフ』と、重症児者を対象とした通所支援事業所『こどもデイサービス ラフ』を開設。2021年4月には多摩市諏訪名店街で、重度の障害を抱える未就学児と18歳以上の方のための居場所『+laugh(アンドラフ)』も開きました。

もともとは学校の先生になりたかった影近さん。それが、障害者のリハビリの様子に触れ、理学療法士の仕事に魅力を感じたと言います。学校で学び、理学療法士が起業する訪問看護ステーションに就職。現場で、さまざまな人とのふれあいを重ねます。そして、地域に貢献するためにも、自分のやりたいことをやるためにもと、起業をしたのです。

「障害がある子どもが生まれた時に、素直に喜べずに悲しんでいるご家族は少なくありません。それは、その子が、将来、地域でどう生きていくかが見えずに悲観したからなんだろうと思うんです。これからの育ちを楽しめないのは、地域に問題があるんです。将来を悲観せざるを得ない地域よりも、仮に障害があっても、仮に高齢になって認知症になっても、楽しく将来を楽観しながら暮らし続けられる地域を、私は作りたいです」

影近さんは、「障害」とあえて「害」を使います。そこには、「障害」を個人の問題ではなく地域の問題として考え解決していく時に、害を平仮名で隠すのではなく、地域側の「障害」という意味で向き合いたいという思いが込められます。

「ともすると、支援を受ける人、支援する人と分けて考えがちで、〝やってあげている〟という意識を持ってしまうこともあります。でも、その境界は曖昧であっていいと考えています。一緒に地域で暮らす仲間なので、上下関係なく対等であり、一人一人が一市民でありたいですよね。余力のある人は、楽しめる範囲でできることを行えば良いのです」

皆が地域の中で助け合いながら、持ちつ持たれつの関係でいられる地域になれば、誰もが自分らしく暮らすことができるのかもしれません。このまちを、皆でそんな地域にしたいと影近さんは、日々走り続けています。

人の流れがある団地商店街に、あえて重度障害児者対応の生活介護事業所を開設しています

影近さんは『+laugh(アンドラフ)』を、あえて、人が行き交う団地商店街にオープンしました。ガラス張りの開き戸からは、施設内の様子がよくうかがえます。店頭には駄菓子屋も併設し、地域のたまり場としての役割も果たしています。そして、2階には地域の人や利用者さん、スタッフが自由に利用できる交流スペースも用意します。

「ここを開いたことで、商店街の活性化にも役立っていると思います。そのきっかけをくれた利用者さんのおかげです。そう、利用者さんの存在自体がまちを支援しているんです」

「『障害児者と何かをしましょう』と謳うと逆に障害が際立つ場面も少なくありません。日常生活の視界の端に『ラフ』の利用者さんを感じてもらい、自然発生的に交流が生まれ、理解が深まっていくと良いなと願います」

『ラフ』には「ともに笑い合う、笑顔になることを大切に」、『アンド』には、「そんな日常がプラスできれば」との思いがこもります。

さて、来たる2月には、子どもも大人も楽しめるイベントを『+laugh』のある諏訪名店街で予定中。「子どものための遊び場を作ろうかな」と楽しそうな影近さん。足を運んで、皆で一緒に楽しい時間を過ごしませんか?

プロフィール

1987年生まれ。北海道網走市出身。仙台市の理学療法士の専門学校卒業後、町田市で理学療法士が起業する施設に就職。独立をきっかけに多摩市に移転。以来多摩市在住。人と人をつなぎ、地域を賑やかにするイベントもしばしば主催。『合同会社ライフイズ』代表社員。『一般社団法人Life is』代表理事。ホームページはこちらから

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