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紙上 Placemaking
「多摩ニュータウンで撮影した映画『すべての夜を思いだす』、ベルリン映画祭で上映を」
/清原惟さん(映画監督)

「幼稚園まで多摩市で育ち、その独特な空気感を覚えていて、ずっと好きなまちでした。だから、いつか映画にしたいと思っていました」と話すのは、映画監督の清原惟さん。

清原惟さん

その清原さんが多摩ニュータウンで撮影、完成させた作品が『すべての夜を思いだす』。2023年2月に開催された第73回ベルリン映画祭に、選考メンバー全員一致で出品が決定し、上映されました。
2017年に作り上げた大学院の修了作品『わたしたちの家』も、2018年の同映画祭で上映されており、長編2作品連続の上映という快挙となります。
今、世界中で最も注目を集める若手女性映画監督、それが清原さんです。

「多摩ニュータウンは、建物と建物の間が空いていて、緑がたくさん。整っていて静かなんだけど、人の暮らしがうかがえる。いいなあと思っていて」
清原さんは制作前にまちを訪れ、丁寧にリサーチしていきました。
図書館で手に取った『ニュータウンの女たち』『団地のをんな』を読み、そこに登場する人たちにインタビューもしました。
「リサーチ以前は子どもの頃のノスタルジックなイメージが強かったんです。街並みがセットみたいだなとか。けれど、リサーチを重ねる中で歴史を知り、人と話し、ニュータウンの中で女性がこんなにコミュニティを強くしていた時代があったこと、今よりももっと力強い人間関係があったことを知り、まちの見え方が変わりました。そうした中から今回の映画が生まれました」

撮影風景(撮影:高森郁哉)

撮影風景(撮影:高森郁哉)

映画は、多摩ニュータウンを舞台に、そこですれ違う、世代の異なる3人の女性達のある1日を描いています。
ともすると、他者が風景になってしまう日々の暮らしの中で、知らない人でもその人の人生があることに気づかされます。

ベルリンには映画好きな人が多く、多くの感想をもらい、作り手として励まされたと言います。
映画を見たアジア系の人からは、「自分の故郷も似たような風景が広がっていました。今は変わってしまったけれど、自分の過去を肯定できました」との言葉をもらったと。

撮影風景(撮影:高森郁哉)

女性を核にした作品が多い清原さん。
「女性の人生ってこれまで社会的な要因によって生まれた壁や悩みが多くあったと思うんです。年代によっても生き方が大きく変化せざるを得なかったり、そのなかで不安もあったり。最初の長編『わたしたちの家』も違う年代の女性を描いた作品でした。映画の新しい構造に挑戦した作品だったので、初めはなかなか伝わらないこともあって落ち込んだ時もあったのですが、世界中でこの映画を好きだと言ってくれた方たちの声に励まされて、映画を撮り続けられていると思います」

『すべての夜を思いだす』は、具体的な公開時期は未定ですが、今後、日本で劇場公開予定だとか。
どんな世界が繰り広げられているのか、とても楽しみです。

【追記2024.1.20】
◆撮影地・多摩ニュータウンで、劇場公開前に「特別上映会」開催が決定!
TAMA映画フォーラム実行委員会

◆2024.3.2〜劇場公開「ユーロスペース

 

プロフィール

きよはらゆい

1992年東京都出身。幼稚園まで多摩市で育つ。武蔵野美術大学映像学科卒後、東京藝術大学大学院映像研究科に進学。藝大の修了作品『わたしたちの家』が「PFFアワード2017」でグランプリを受賞し、2018年ベルリン国際映画祭で上映。それを皮切りに、世界18の海外映画祭で上映。クリチバ国際映画祭(ブラジル)でグランプリ、上海国際映画祭「Asian New Talent Award」部門(中国)で最優秀監督賞を受賞。世界中で大反響を呼ぶ。また、2022年には、アジア最大規模を誇る釜山国際映画祭(韓国)で、注目の次世代日本人監督10名の作品を上映する特集に選出される。そして、同年に完成した長編第2作目の『すべての夜を思いだす』が、2023年2月に開催されたベルリン国際映画祭に、初長編から2作品連続での上映を果たす。現在、世界で一番注目されている若手女性監督として話題を集めている。公式Twitter @kiyoshikoyui

 

プレイスメイキング とは
そこに行ったら人と出会えて、つながって、ワクワクドキドキ楽しい時間が過ごせて、笑顔が広がって、まちが盛り上がる何かを作り出せる。そんな空間を、私たちが普段暮らすまちの中に作る取り組みが「プレイスメイキング」。

紙上プレイスメイキング とは
『もしもし』紙上が、そんな「プレイスメイキング 」の場になりたい。『もしもし』に触れることで、新しい人とつながったり、ドキドキワクワクの思いが広がったり、新しい発見があったり、このまちで暮らしていることを嬉しく思ったり、安心したり、心が豊かになったり。そして人に優しくしたいなと思えてきたり。そんな『もしもし』を皆さんに届けたい、一緒にこのまちを楽しい場所にしていくきっかけになれたら。そんな思いを込めました。

 


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