モリテツのスペイン紀行47「最果ての岬で(2)」(フィステーラ〜ムシア)
中世期から生と死の境界と信じられ、死者の魂が眠る「黄泉の国」へ霊魂が旅立つ誘いの地とされてきたが、青空の下、波風も穏やかで終いの地といった雰囲気はない。きっと冬には情景が一変するのだろう。錆びた赤い灯台(写真1)をかすめてカモメが二羽、滑翔した。海辺の石塔に巡礼者が靴や杖を祀っていた(写真2)。こんな点景がいかにも最果てを実感させてくれる。
丘の上から見ると、亜麻色の外壁が見事なサンタ・マリーア・ダ・バルカ教会と真向かいに立つ一枚岩を斧で縦割りしたかのような高さ10㍍はあるモニュメント(写真3)の対をなすシルエットが大西洋と対峙して見事な情景。
下に下ってモニュメントに近づいてみた。ここが岬のメーンストリート(写真4)。教会でマリア様に祈りを捧げた。聖マリアが船で着岸して、布教に熱心なヤコブを励ましたことから「舟の聖母教会」との異名も。漁の前に祈りを捧げる地元漁師の守り神でもある。
ところがである。2013年12月25日、なんとクリスマスの朝、この教会は落雷によって丸焼けになってしまったという。2年後に修復したが、それにしてもマリア様へカミナリとはなんとも笑うに笑えぬ話。モニュメントはその記憶を残すためともいわれている。むろん風よけの防風塔でもある。
(続く)
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