LIXIL不動産ショップ 中央企画
相続相談 不動産のプロによる相続サポート⑩」
多摩地域で40年以上の実績を持つ不動産のプロ『LIXIL不動産ショップ相続サロン』代表・田岡浩一郎氏が、今注目の「家族信託」や不動産相続などについて話します。
大切な財産を、大切な家族と一緒に守っていく新しいカタチ「家族信託」
〝人生100年時代〟を迎える現在、さまざまな問題も生まれています。
例えば認知症。親が認知症になった後、特に対策をとらずにいると、認知症になった親の資産は凍結され、定期預金の解約や不動産の売却などが困難になり、自宅が売れない、修繕・建て替えができない、施設に入居するための費用が調達できないなど、さまざまな問題が起きてきます。
それらの問題から家族を守る対策として、今注目されているのが「家族信託」です。
「家族信託」は子どもや孫などの信頼できる家族を「受託者」として、親等の「委託者」が認知症発症前に財産の管理・運用・処分を託すもので、委託者が認知症を発症したとしても、家族による柔軟な財産管理が可能になります。高齢者の財産管理を考える上で、検討対象となるさまざまな制度を代用できる幅広い機能を兼ね備えていて、長期にわたり安心できる一貫した財産管理・資産承継の仕組みを作ることができるのです。
家族信託で注意すべき信託財産、
「抵当権付き不動産」
親の老後の財産管理を家族で支え、円満な資産承継まで一貫して実現できるというメリットが多い制度「家族信託」ですが、注意すべき点もあります。
その1つが「抵当権付き不動産」を信託財産とする場合です。
※前回(こちらをご覧に)、「抵当権の付いている不動産」を信託財産とするときの注意点について少しご紹介しました。
信託したい不動産にローンが残っている場合、当該不動産には抵当権が付いていると考えられます。抵当権の付いた不動産を信託財産とする場合、抵当権者である金融機関の承諾が不可欠で、抵当権者である金融機関とトラブルに発展することがないよう進める(調整する)ことが大切です。
※抵当権=住宅ローン等が払えなくなった場合の担保として、金融機関が土地と建物にかける権利のこと
「家族信託」では、財産の所有権が委託者から受託者へと移っても、債務は移転されず債務者は委託者のままです。そのため、それにより生じる債務の不払いのトラブルや、当該抵当権付き不動産を売却するために繰り上げ返済をしようとする際に起きる不都合などもあります。それらを避けるためにも、「債務引受」を行う必要があります。
「重畳的債務引受」と「免責的債務引受」
そのメリットとデメリット
債務引受には、委託者と受託者が連帯債務者となる「重畳的債務引受」と、委託者は債務者から離脱する「免責的債務引受」があります。それぞれのメリットとデメリットがありますので、その点について説明したいと思います。
【重畳的債務引受】(委託者と受託者が連帯債務者となる)
(メリット)
・債務負担者の追加は金融機関にとってメリットであるため、所有権移転や債務引受の承認が得やすい。
(デメリット)
・親(委託者)が判断能力を喪失した場合、依然親が債務者であるため、金融機関との契約条件の変更(繰上返済等)に対応できなくなるおそれがある。
・委託者死亡時に連帯債務は法定相続されるため、債務引受手続きを行う必要がある。
【免責的債務引受】(委託者は債務者から離脱する)
(メリット)
• 重畳的債務引受と異なり、親(委託者)が債務者から離脱するため、金融機関と受託者のみで契約条件の見直しが可能。
• 委託者死亡時の債務の相続は発生しない。
(デメリット)
・委託者の個人財産が責任財産ではなくなるため、金融機関にとってはリスクがある。
・委託者を連帯保証人とする、受益権に質権をするなどの対策を金融機関から求められることもある。
◼️債務引受ができない場合(金融機関の承諾が得られない場合の対処法)
まだまだ新しい制度である「家族信託」。家族信託を理由とする債務引受の実例は多くないのが現状です。そのため、前例がないことを理由に、債務受による対応を断る金融機関があっても不思議ではありません。
では、そのような金融機関では抵当権付き不動産は信託財産とすることはできないのでしょうか。
この場合は2つの方法が考えられます。
(1)(収益不動産の場合)不動産ローンはそのままにする
債務者(ローン返済者)を委託者にしたまま家族信託を行います。入居者からの家賃収入は、受託者の信託口口座に入金されます。受託者は入金された家賃収入を信託配当として、受益者である親に送り、親はそれをローン返済に充てるという流れです。
※なお、この方法では、委託者である親が意思能力を喪失した場合、依然親が債務者であるため、金融機関との契約条件の変更(繰り上げ返済等)に対応できなくなるおそれがあります。また、委託者死亡時にはローン債務の法定相続が行われます。そのため、債務者と受託者を一致させるために債務引受が必要な場合があります。この場合も、事前に金融機関へ相談し、承諾をもらうことが必須です。
(2)家族信託に対応できる金融機関に借り換えをする
抵当権者である金融機関が、そもそも家族信託に全く対応していないという事態は、十分に想定されます。家族信託を優先する場合には、家族信託に対応できる金融機関での借り換えを検討する必要があります。
さまざまなメリットのある「家族信託」ですが、始めるにあたり、このように知っておきたい点、注意したい点等もあります。
専門家に相談しながら、納得したカタチで始めることをお薦めします。
「家族信託」や「不動産相続」についてのさまざまな疑問や悩みは、どうぞお気軽にご相談ください。
多摩地域で40年以上の実績を持つ不動産のプロ『LIXIL不動産ショップ相続サロン』が、幅広い相続や信託の知識と専門家とのネットワークを通じてサポートいたします。
また、相続勉強会も定期的に開催しておりますので、興味のある方はぜひご参加ください。
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