Tama Hito 55
佐伯 良四郎 さん
「木の葉天目に魅せられ15年超 常に新たな発見を求める日々」
新しい技法を追求、そして広め続ける
自然の木の葉を器に直接焼き付ける「木の葉天目」。陶器の中に葉脈がくっきり浮かび上がるその美しさと難易度の高さに魅せられ、15年超にわたって研究し続けているのが佐伯さんです。
「焼くほどに一筋縄ではいかないことを痛感するようになって。だからこそ、人がやらないことを試していこうと、新しい技法に挑戦してきました」
一般的な木の葉天目の作り方は、天目釉をかけた器に生の葉を載せ、重石をして器とともに素焼きし、重石を外して本焼きします。一方、佐伯流は、葉だけを複数枚同時に焼き、その葉の灰を施釉した器に載せて本焼きする方法。
「複数の中から一番良い灰を選ぶことができるので失敗を減らせます」と。
「木の葉天目はムクの葉を使い、黒天目釉を掛けて焼き上げるのが一般的なのですが、私の場合はいろいろな葉を使い、なまこ釉など黒天目以外の釉薬も用いるので、木の葉天目と呼んでいいのか迷っています」
佐伯さんの願いは、木の葉天目を発展させて、多くの人が同じように失敗なしで作れるようになることです。だから、発見した技法は独占することなく、どんどん広めています。2020年には、その技法を記した2冊の著書『新しい感覚の木の葉天目』『木の葉天目の新しい技法』を続けて出版しています。
新たにやりたいことに、常に取り組むその姿
大学で橋梁設計を学んだ佐伯さん。都市計画に携わりたくて、都庁の建設局に就職します。けれど経理契約が主業務で、思い描いていた道とは違いました。そして昼休みを利用して美術館に足を運ぶうちに、絵の魅力にとりつかれ、独学で自身でも描き始めました。
「で、絵が描きたくて仕方なくなって、退職。聖蹟桜ヶ丘駅前で画材屋をやりながら、師について描き続けました」
その画力は見事で、受賞多数に。並行して始めた陶芸でも才能を見せ、各種陶芸展で入選を果たします。
「その間も、竹ひご、鎌倉彫り、パンフラワーといろいろやりもしました」
5年前からはコーラスもスタート。唱歌や童謡にまつわるエピソードを独自でまとめ、冊子にも仕上げています。
「なんでも深く研究していくとつながりが見えてきて面白いですね」と。
今は、「留学する孫と英語で話したい」からと英語の勉強にも挑戦中。好奇心旺盛で前向きなその姿勢。「こう生きたい!」と思わせていただきました。
アトリエで、自作の木の葉天目を手に。
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プロフィール
1940年東京都生まれ。八王子市在住。大学卒業後、東京都庁に就職。絵を描くために退職。聖蹟桜ヶ丘で画材店を営みながら日本画家・吉田多最氏に師事。1994年、多摩総合美術展特賞他受賞多数。並行して陶芸を始め、陶芸家・渋谷太郎氏に師事。2012~2014年、全陶展入選。2012~2019年、陶芸財団展入選。木の葉天目を15年を超えて研究。著書『新しい感覚の木の葉天目』『木の葉天目の新しい技法』。ホームページはこちら