1. HOME
  2. 紙上 Placemaking「田んぼやメカイ作りで里山環境の再生を」/里山農業クラブ 代表:塩谷 暢生さん

紙上 Placemaking
「田んぼやメカイ作りで里山環境の再生を」
/里山農業クラブ 代表:塩谷 暢生さん

京王堀之内駅を背にして大栗川橋を渡る都道を進むとトンネル。その先の信号で右に曲がりすぐを左に。町田平山八王子線という農道を、左右に畑や牧場も見ながら進みます。
出てきた出てきた、左手に「田んぼの学校」の看板!
農道を分け入りずんずん進めば、周りを深い緑に囲まれたぽっかり明るい空間が目の前に。そこが『里山農業クラブ』の田んぼです。
水の流れが耳に優しく響く中、蛙が鳴き鳥が鳴き、風がそよぎ、なんとも開放感あふれる空間。

気持ちいい!

里山農業クラブのメンバーの皆さん

代表の塩谷さん

『里山農業クラブ』の理念は「農なくして里山なし」。
多摩ニュータウンの開発で第19住区にあたる堀之内エリアは、さまざまな理由で開発保留区域となり、荒れたままの30数年を重ねてきました。
このひどい状態で耕作放棄地となっている畑や田んぼを何とかしたいと発起したのが、代表を務める塩谷さんです。サラリーマン生活を勤め上げた定年後の63歳の時でした。
自身に農業経験はなかったものの、経験者の助けを借りて、地域の人たちと一緒になり、畑や田んぼとして里山を守る活動を展開してきました。
2反5畝の田んぼや畑を中心に、米や野菜作り、雑木林の整備、そして生き物・植物の保護を行なっています。

苗を綺麗に揃えて田植えの準備も

「田んぼの学校」は、地元幼稚園とも連携する取り組み。
2園がそれぞれ1枚の田んぼをもち、子どもたちとその保護者と共に、田植えや草取り、稲刈りを行います。
泥の中に素手や素足で入る子どもや保護者。
最初は恐る恐るといった様子ですが、すぐにその楽しさに夢中になって、大泥大会に興じることに。
自然の中で体を動かし、米つくりを通して農業の大切さも学び、時に、絶滅危惧種のホトケドジョウ、シュレーゲルアオガエル、オケラといった生き物にも触れ、貴重な体験を重ねています。

ホトケドジョウ

オケラ

シュレーゲルアオガエルの卵

そして農閑期には、メカイ作りも。
このメカイ、里山に生えるシノ竹で編むザルやカゴで、江戸時代の終わりころから南多摩地域で農家の貴重な現金収入源として作られてきたと言われる伝統技術品です。
ただ、戦後のプラスチック製品の台頭や、農家の収入源の多様化などで衰退していきました。
そんな中で、このメカイ作りの技術を持っている人も年々少なくなる一方で、その継承と存続が危ぶまれていたのです。

八王子環境フェスティバルでメカイ作りを披露

メカイ作りの様子

『里山農業クラブ』では、「八王子由木メカイの会」として貴重な民俗伝統技術を後世に残していこうと活動を続けて20年超。材料のシノを伐採することから取り組んできました。
そして今年、このメカイ作りは、東京都の無形民俗文化財・民俗技術の第一号に指定され、「八王子由木メカイの会」が、保存継承する団体として認定もされました。

クラブの皆で作り上げた「ひとっこれ」の中平

20年前の耕作放棄された畑では、シノ竹が生え茂りヤブ化して里山を荒らしていたと言います。
そのシノ竹を何年もかけて切り、メカイとして生まれ変わらせてきた、その活動は、里山保全に大きく役立っているのです。

活動への参加は出入り自由。
幼稚園の「田んぼの学校」の活動で自然の中での体験に魅せられた、若い世代の参加も増えてきたと言います。

里山の保全、伝統民俗文化の伝承、このまちの豊かな自然を次世代に残すためにも、活動に参加してみてはいかがですか?

プロフィール

さとやまのうぎょうくらぶ

平成12年12月12日設立。東京都が2番目に指定した里山保全地域の一部・堀之内宮嶽谷戸で2反5畝の田んぼや畑を中心に自然循環型農業を実践。米・野菜作り、雑木林の整備、生き物・植物の保護、地元幼稚園の園児への「田んぼの学校」の開催、貴重な民俗技術「メカイ作り」の保存普及活動も行う。活動の様子は「はちコミねっと」で紹介! こちら

プレイスメイキング とは
そこに行ったら人と出会えて、つながって、ワクワクドキドキ楽しい時間が過ごせて、笑顔が広がって、まちが盛り上がる何かを作り出せる。そんな空間を、私たちが普段暮らすまちの中に作る取り組みが「プレイスメイキング」。

紙上プレイスメイキング とは
『もしもし』紙上が、そんな「プレイスメイキング 」の場になりたい。『もしもし』に触れることで、新しい人とつながったり、ドキドキワクワクの思いが広がったり、新しい発見があったり、このまちで暮らしていることを嬉しく思ったり、安心したり、心が豊かになったり。そして人に優しくしたいなと思えてきたり。そんな『もしもし』を皆さんに届けたい、一緒にこのまちを楽しい場所にしていくきっかけになれたら。そんな思いを込めました。

 


#堀之内 #農業 #里山 #田んぼ #絶滅危惧種 #里山農業クラブ #メカイ #塩谷暢生 #プレイスメイキング #placemaking

関連記事