モリテツのスペイン紀行 最終回「さらばほほ笑みの国(3)」(マドリード8)
宿に戻る途中、生ビールにサンドイッチ付きで1・5ユーロ(200円弱)の看板を見つけた。白いコック帽のバーテンダー二人に愛想よく迎えられた。店内は女性の飲み客も含めてシェスタとは無縁の世界。
バーテンダーがこぼれる泡も気に留めず、セルベッサを並々とジョッキに注ぐ。サンドイッチに挟まれた生ハムの豪華さ。我ながら卑しいと思いつつ、こっちの豪華絢爛は身になる実感がこもっているなあ、とまず一杯目をぐいとあおった。
いよいよシェスタの国ともお別れである。目をつむると、真っ先に地平線の彼方まで連なる緑鮮やかな葡萄畑が広がった。それから眩しいばかりの陽に輝く紺碧の海。丘の向こうからいずる朝日を背に十字架に手を合わせる巡礼者……、素晴らしき大自然と共に、のんびり、ゆったり、よく笑い、ワインに親しみながら暮らす人々。経済的合理性ばかりを追い求めて生きる我が日本人もどこかしら見習うべきだなあ、などと感慨に耽りながらスペイン紀行を締めくくることにした。
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長い間ご愛読ありがとうございます。旅は終わりません。次に招待するのは、独特の文化と自然を誇るキューバ、メキシコ、南米大陸へ――どうぞお楽しみに。
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