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TamaHito 11 
田中 鉄太郎さん
子どもたちが豊かに育つためには、 大人ががんばる姿を見せること

地域を愛する心をもつ
そんな子どもに育てば…

「今回のコロナ禍で、当初は未就学児のケアや幸せについて語っている人が一人もいない。こどもは後回しな社会なんだと改めて感じました」と話すのが、田中鉄太郎さんです。
高校を卒業し映像の世界に。福島での農家への住み込み体験をきっかけに、在籍中に農家を題材にしたドキュメンタリーで作品賞を受賞。その後、香港、メキシコ、沖縄などを単身放浪。阪神淡路大震災の時には、住吉付近で復旧活動に参加。そして、24歳からは飲食業界に転身し、料理人として働いていました。
「こどもが生まれたのに、仕事が忙しくすぎて子育てに参加できない日々で、それがストレスでした。このままじゃ家庭崩壊するというところまで行きそうでした」
ちょうどその時、多摩市で保育所を営んでいた母親から「2つ目の保育所開設を手伝ってほしい」と声をかけられたことがきっかけで、31歳で保育業界に身を転じました。
「当初は、調理師としてこどもの世界を学びました。3年目から運営に参加するようになり、次第に会社を引き継ぐ決意が固まっていきました」
37歳でトレーニングセンターに通い、国際モンテッソーリ教師の資格と保育士の資格を取得しました。
「当時は“保育サービス”という言葉が世の中にやっと出始めた頃。“株式会社が保育園を運営するの? それって大丈夫なの?”という雰囲気がまだありました。僕は、もともとサービス業に従事していたので、利用者である親が喜ぶサービスを提供するの苦ではなく次々とアイデアが湧きました。ただ、保育の本質を学ぶにつれ、単に喜ばせるのではなく、真の子育ての幸せを提供したい、子どもを中心に据えたコミュニティ作りや親との関わりを模索するようになりました」
まちが20年、30年先も元気であるためには、子どもが、地域に愛情を持って、住み続けたいと思うまちでなければと話す鉄太郎さん。
「そういった意味でも、幼児教育には環境教育が必要だと考えています。大人になった時に、花一輪、樹一本を大切にする心のない人になったら、地球はどうなるのか。大切な人格を形成する幼児期に、自然を大切にすること、地域を大切にすること,人のつながりや地域を愛する心を育んでいくことはとても重要だと思うんです」
その気持ちが、2017年秋の「つどいの木」移植プロジェクトに現れました。
「つどいの木は、当施設『こどもリビング』の園庭に面した多摩川の土手に生える一本の木で、多くの子どもや地域の人たちが集い、遊び、触れ合うコミュニティのシンボルツリーでした。それが、区画整理事業で伐採が決定したんです。なんとか、命をつなげたい、皆の居場所を守りたいと、移植を行う費用を集めるクラウドファンディングを実施しました。思いもよらないほどたくさんの方々に支援いただき、クラウドファンディングを達成。そして、さまざまな方の力を借りて、移植も成功。今年、3度目の春を迎えました」

新しくつながって
何か一緒にできるといい

「保育所は子どもを預かるだけの施設ではなく、人間形成の土台をつくるかけがえのない場所。子どもたちが豊かに育つためには、地域が前向きに元気であること、支え合う姿勢が溢れていることが何よりです。だからこそ、保育の世界で働く私は、誰かの力になることをもっともっとやらなきゃと思うんです」
今回のコロナ禍で、聖蹟桜ヶ丘の飲食店の応援ポスターを自発的に作った小林昭一さんにも刺激を受けます。
「ゴールデンウィーク前のことです。『こどもリビング』の目の前の多摩川沿いを多くの人が散歩していました。報道でも散歩やスーパーの密集が問題になっていました。それを見て、どうせなら、今厳しい中で頑張っているテイクアウト店を巡って応援すればいいのではと思ったんです。イラストを描くのが得意なスタッフが、テイクアウト店の地図を手描きで作成してくれて、それをSNSで発信するつもりでした。それが、小林さんと共同でチラシを作成し、地図掲載店や協力店に置いていただけることになったんです。いざという時の大人の団結力を子どもに見せたいなと」
今、この大変な状況の中で、備えておけるもの。それはつながる力を培っておくこと。地域が正常でないのなら、皆で工夫して知恵をしぼって前進していく。自分じゃないものを守っていく。そんな大人の姿を子どもたちに見せていくことが大切なのだと。これまでの活動を振り返り、自分もたくさんの「つながり」に支えられて生きていることを実感していると、鉄太郎さん。「特に、妻と家族の支えは大きい。感謝して生きていきたい」とも。
「保育所の自粛要請中にも、保育所の親御さんから温かい手紙や手作りマスクをいただきました。また、スタッフが、私に何も言わずに、テイクアウトマップのチラシを、駅前で配ってくれたりもしました。そんな励ましの心がとにかく嬉しかったですね。ここからは、新しいコミュニティを模索して、ネットワークを確かに築き、互いに力を出せ合えるまちにしたいです。何か一緒にできるんじゃないか?と思ったらぜひ声かけしてください。私も、他の人の、このまちの、力になれることをどんどんやっていきたいと思っていますから」

3度目の春を迎えた「つどいの木」。これからも新しい芽を咲かせ、葉がつき、枝を広げ、多くの人を豊かな心にさせてくれる空間となるでしょう。

プロフィール

多摩市で保育所4園と民間学童保育&コミュニティカフェ「こどもリビング」を運営する『株式会社ウィズチャイルド』代表取締役。1972年生まれ。高校卒業後、映像の世界に学び、24歳以降は外食業界で調理師として腕をふるう。31歳で保育業界に転じ、モンテッソーリ教育や自身の子育て経験から「生み出す喜び」を合言葉に、保育者と親が共存できる環境作りに励む。
つどいの木のある『こどもリビング』(学童保育とコミュニティカフェ)も営業再開し、お弁当の宅配やプライベートガーデン貸切サービスなど、コロナに負けない、新たな地域貢献に挑戦中です。応援を!
『こどもリビング』 多摩市一ノ宮2-1-2 TEL042-400-6461 https://www.with-vhild-living.com

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