スペイン紀行20「その独創性にただ驚嘆!」 (バレンシアその5)
リバーホステルでは2.9ユーロでバタールやクロワッサン、生オレンジジュースなどの朝食をとれる。くつろぎやすいきれいなキッチンでカジノ負け組3人はパンをかじりながら再び反省しきり。
「貧乏旅しているのにカジノに出入りなんて堕落よね」と美帆嬢が言えば、「バルセロナまでのRenfe代もここの宿代も消えたね。だから旅に響かないよう注意したんだよ」とゆとりの表情でたしなめる勝者ケイル君の一言にうなだれがちだ。
旅のコストに換算すると本当にバカなことをやってしまった。こんなことやっていては旅の安全注意も疎かになってしまうし、事故の元と、猛省せざるをえない。
「旅はもっとクリーンに。自然を親しむべきよね」と言う美帆嬢に「じゃあ、サイクリングはどう?」と持ちかけてみた。
スペインは自転車王国。週末はサイクリストがどっと出現。友人同士や家族連れが同じユニフォーム姿で走る微笑ましい風景がそちこちに。自転車通勤も盛んだし、ツール・ド・フランスの常勝国でもある。
目的地は宿のすぐ前を流れるトゥリア川ルート。見事なグリーンゾーンが広がる河川敷をサイクリング道路が幾筋も貫いて公園やスポーツ施設を繋いでいるのだ。走る人を見ていると実に爽快そう。
この川はその昔暴れ川だったが、1957年、大洪水で旧市街地が大被害を受けたのを機に大改造、運河を建設。河川敷には総延長10㌔にも及ぶグリーン帯を誕生させたというのだ。日本の役人にはとても及ばぬ発想ではなかろうか。
早速レンタル自転車屋に寄って4人でスロープを下りて河川敷へ。といってもそのイメージはない。緑濃い樹木の中を走ると、緑の木立に突き当たった。事前に聞いていなければ、ここが川など想像もつかない。5、600㍍ほど走ったか、コンクリート群の地下鉄アラメダ駅に。橋の下を利用して地下駅を作ったのだ。
そこからさらに南へ1.2㌔下ると、スペインが誇る未来都市の出現である。発想のスケールがデカすぎる。まずお目見えしたのが「レミスフェリック」なる円形の建物。外見からは見当もつかないが、高度の映像とクリアな音響を楽しむIMAXシアターにプラネタリウムを併設した映像・音響センターだという。
その隣には骨をむき出しにした奇妙な建物。これは恐竜の骨をイメージした「フェリペ王子科学博物館」。なんとも面食らってしまうけれど、ここには5つの独創的な建築があり、芸術科学都市と銘打っている。さらに南へ500㍍、7つ目の橋をくぐったところにあるのが欧州最大の水族館とされる「オセアノグラフィック」。随分走ってきたように思えるが、走行距離は3㌔強。
ちなみに残り2つは、オペラハウスの「パラウ・デ・レス・アーツ」とガーデンプロムナードと銘打つ「ルンブラクレ」。
水族館なら休憩に最適。4人ぞろぞろと入場。入場料は28.50ユーロ(3,500円強)。中に入って驚いた。一言に凄い。「カジノなど論外だね」などと美帆嬢と話しながら奥へ。
大小さまざまな魚類が群泳する巨大な水槽の下をトンネル通路が30㍍ほど続いている。巨大なサメが一番人気(写真10)。なんと子どもたちがこの通路に毛布を敷いて一晩サメを眺めながら過ごすイベントもあるという。どこまで行ってもその発想にはかなわない。
ほかにもベルーガ、イルカ、セイウチ、ペンギン等々。紅海、南極など海洋生態系別に分かれて、4万を超える水の生物が飼育されているとか。
「いやあ素晴らしい。ここで乾杯といきますか」とクレマンさん。これぞ独創の決め手か。こんな涼し気なレストラン(写真11)ならセルベッサも、さぞやうまかろうぞ!となだれ込んだ。