1. HOME
  2. スペイン紀行23 「メッシに会えた!?」(バルセロナその2)

スペイン紀行23 「メッシに会えた!?」(バルセロナその2)

翌日は午前11時すぎまでベッドに横たわっていた。シャワーを浴びてロビーに下りると、若者やシニアの旅人が気ままに昼食中。前夜チェックインしたケイル・美帆嬢も。見知らぬ者同士なのに、互いの雰囲気が柔らかくて心地いい感じ。
その中に、前夜一緒だったイタリア人女性も。ヴェネチア出身のエミリア。「シルクロードの旅でアドリア海を客船でヴェネチアに入港した時の美しさは忘れられない」と話すと、「父は大運河の観光船の船長よ」。ゴンドラの船頭から上り詰めてオーナーになったとか。
「私はミラノに出て美容師になるの」
ここではセビリア滞在中、海辺のカディスにドライブに連れて行き、バーベキューをごちそうしてくれたカナダのベン君とも再会の約束をしていた。フロントで部屋番号を教えてもらいたずねると、電話中のスマホを耳元から離して「Oh! Oh!」と大げさな声をあげながらハグ。ワーキングホリデービザでカナダ人が営む家具卸会社で働きながらスペイン語を学んでいるとか。
「今から出かけるので近くを案内しますよ」
二人で連れだって表に出た。凱旋門は目の前である。1888年開催のバルセロナ万博への入場門。高さ30㍍。上部には丹精込めた彫刻。門をくぐって正面のシウタデリャ公園に向けてのんびり歩く。道路上にカラーで地図が描いてある。城を象った万博レストラン「三頭龍の城」脇を右折、通りから外れると人通りが急に少なくなった。
「ここでメッシに会いましょう」とベン君。
看板の「mmm…xocolata!」の意味がわからず言われるまま5ユーロを払って入る。入場券が食べられるチョコレート。しかも国旗入りだ。
「チョコレート博物館ですよ」とベン君はいたずらっぽく笑った。驚くばかりだ。ものすごい数の展示物。コロンブスから宮殿、サグラダ・ファミリア、恐竜、人形等々。すべてチョコ製。その一角にリオネル・メッシがガラスケースの中に立っていた。
実はチョコレート発祥の国はスペイン。コロンブスが最初にカリブからカカオを持ち帰り、その後、アステカ王国(今のメキシコ)を征服した探検家エルナン・コルテスがアステカ王にチョコレート飲料を振る舞われ、帰国後、貴族に紹介して大流行。王国では薬であり、貨幣でもあったという。博物館はバルセロナ菓子職人組合の運営。
博物館を出て200㍍余、ピカソ美術館前まで来ると、ベン君は「僕の案内はここまで。仕事に行きます。どうぞごゆっくり」と背を向けた。
このあたりはゴシック地区というらしい。バルセロナ旧市街の古代エリアというべきか。迷路のように連なる石畳の路地にローマ帝国時代の教会や広場が残る。そんな陰のイメージがある一角に前衛的でカラフルなピカソを配置。さすがのセンス。思わず唸らせられる。
ピカソ博物館はマラガで見届けたつもりだけど、お付き合いだ、と12ユーロを支払って入った。ピカソは1890年代の学生時代、バルセロナで筆を磨き、パリへ進出、再びバルサに戻り、カンヌを永住の地とした。
歩きすぎて汗もかいたので宿に戻ったところ、フロント係の青年が「ここではみんなで夕食をこしらえるんだ。フリーだからどうぞ」と勧められた。宿代が安いうえに食事は無料。沈没組が続出するのはよくわかるけど、一体、どんなものを料理するのか? スペイン時間で午後9時。それまで晩酌お預けか。ボヤきつつ、半信半疑ながら密かに期待もするのだった。

関連記事