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TamaHito 47
タナカ マコト さん
きっかけは、レジ横でレシートを切ったことでした

100体以上作っても、ずっと切っていたかった

「受験費用を自分で稼ぐのならと大学浪人を許可されて、浪人中にオフィス街のコンビニでアルバイトをしていました。オフィス街だけにとにかく土日が暇で暇で。お客さんが来ないんです。で、雑誌を読んだり、レジ下のコインを拾ったり、そんなことをしても時間が余ってしまって。ふと目に留まったのが、お客さまが残していったレシートとハサミ。フリーハンドで切り絵をしてみました」

そんな20年前のふとしたことから、切り絵作家・タナカマコトさんが誕生します。

大学の映像学科で脚本を学んだ後、テレビCMの制作会社の企画演出部に入社。

「でもこの業界だと、私はやりたいことができないんじゃないかと思うようになっていきました。せっかく新卒で入った会社を辞めるのは怖かったのですが、思い切って退社することに決めました」

さて次は何をしようかと悩む中、浪人時代から取っておいた切り絵作品を持ってアートイベントに参加します。

「作品をご覧になった方から『いいね』『すごい』と言っていただいたことがとても嬉しくて楽しかった。もしかしたら、この世界でやっていけるかもと思ったんですよね。その時、お世話になっていた方に『とりあえず100体作品を作りなさい。嫌になっても作り続けること』と言われたんです。それは、趣味でやっていたことを自信を持ってこの先やっていけるかどうかを示唆してくださったのだと思います。飽き性の私が、100体以上作っても全然飽きなかった。それで『切り絵でやっていこう!』と決心しました」

ただ、世の中はそんなに甘くはありません。作家活動だけでは食べていけず、アルバイトをしながら作品を制作し、アートイベントに出店する日々でした。

そんな中、2011年、テレビ番組での出演がきっかけとなり、仕事の依頼が入ってくるように。そして2019年、第20回スパイラル・インディペンデント・クリエイターズ・フェスティバルでグランプリを受賞。グランプリアーティスト展では、タナカマコトさんの娘さんへの読み聞かせから生まれた創作童話をテーマに、広辞苑や文庫本を素材に制作した、会場いっぱいに拡がる切り絵のインスタレーション「切りひらひらく」を発表し、話題を呼びました。

さらに、2021年4月、銀座のUNIQLO TOKYOにて、柔らかいリネンのシャツを素材に、クラゲをテーマに制作した展示「ほつれても」を開催。オリジナルな切り絵の世界を見せる作品展示の場が増えていきました。

日常にある身近なものが、美しい世界へと変わる

タナカマコトさんの作品は、レシートや書物の言葉を残しながら、形を切り抜き、残された言葉と切り抜かれた形を関連づける、他にはない独自のスタイル。その繊細で緻密な切り跡から言葉が浮かび上がって、見る人を驚かせ、胸躍らせ、ニヤリとさせ、考え込ませてくれます。ワクワク感に溢れた作品ばかりです。額に入れ、台紙に置いた作品だけでなく、吊るされ、風に吹かれ、自由に動く作品がなんとも美しく、新しいのです。切り抜かれた部分から漏れる光で影が作られ、また、もう一つの世界が生まれてくる。見る角度によって、また新しい発見が生まれてくる。いつまでもいつまでも見ていたい作品たち。

「私の作品のテーマは、日常の中で感じた小さな疑問や面白かったことです。5歳の娘との会話や遊びの中で、『あ、これ、作品のタネにしよう』と思うこともよくあります」

普段の生活にある身近なものがタナカマコトさんの手によって新たな世界へと生まれ育っていきます。ぜひ、タナカマコトさんのHPやインスタグラムでご覧に!

 

プロフィール

1982年東京生まれ。町田市在住。ハサミ一つで、細かな下書きはせず、フリーハンドで切り絵をする切り絵作家。大学浪人時代から切り絵を始める。近年では、CDジャケットデザインやTVCM、WEBCM、ミュージックビデオ、店内装飾など切り絵を通して活躍中。[HP]http://tanakamacoto.main.jp/ [Instagram]@tanakamacoto_works

2021/9/18~11/14まで調布市文化会館たづくり1F展示室で開催されていた「風、抜ける」。そのアーティストトークの様子をYoutubeでご覧になることができます。前編はこちら後編はこちら

作品の数々は、こちらの写真でご覧に。

「切りひらひらく」
Courtesy of Spiral / Wacoal Art Center

「ほつれても」Photo:Chihaya Kaminokawa

「流るるる」Photo:Chihaya Kaminokawa

「風、抜ける」Photo:Chihaya Kaminokawa

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