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モリテツのスペイン紀行44 「世界の若者に囲まれて(2)」(サンティアゴ・デ・コンポステーラ)

 まもなくミサだ。午後12時19分、ミサはクライマックス。巨大な大聖堂内は世界の巡礼者で満杯。香炉が頭上で白煙を吐いて揺れている(写真1)。赤い法衣の男八人が滑車から伸びた長く太い綱を力の限り引っ張る。これが有名なボタフメイロ(大香炉)(写真2)の儀式だ。天井にぶつかりそうなほどの勢いで大円型を描く黄金色の物体。その昔、長旅を終えた巡礼者の身体や髪は汚れて臭いもきつかったことから、巨大な香炉で臭い消しを試みたのが始まりという。聖書を手にした神父の言葉が続く。パイプオルガンの旋律もひときわ高い。

 「adiós(さようなら)」という神父の重く低い声が聞こえた。男たちが香炉を肩に担いで運ぼうとしている。ミサは終わった。拍手が鳴り響いた。感極まって立ち上がり、十字を切って涙ぐむ人やベンチに座り込んで感極まる老女。周囲の人とハグする姿も。カトリック信者の人たちは「聖体拝領」に並んで神父から聖なるお煎餅を貰っていた。キリスト教徒には生涯、忘れられない思い出になるにちがいない。

(続く)

世界の若者に囲まれて(1)はこちら

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