紙上 Placemaking
「志高く、夢を広げ、病と共に 生ききる姿を見せる」
／スタジオ・アン 八王子南館　石谷 真喜子 さん

32歳で写真館を開いた石谷さん。
2017年には、八王子市東浅川町にオープンした『iias高尾』内にも出店し、全部で3店舗のスタジオを経営。
信頼のおけるスタッフにも囲まれ、忙しいけれど、充実した日々を送っていました。
そんな2018年の3月。「あれ？」と、石谷さんは違和感を感じます。
そして、半年後、筋萎縮性側索硬化症（ALS）と診断されました。

石谷 真喜子 さん

ALSは、筋肉を動かし、かつ運動を司る神経（運動ニューロン）が障害を受けるもので、手足、喉、舌などの筋肉がだんだん痩せていって力がなくなっていく病気です。

右手が、そして左手が次第に力が入らなくなってしまう体。
「動かせないことを伝えながら、自分でできることはやっていました。でも次第にできないことが出てきて。ならば、いかに自分にとって気持ちよい状態でいられるか。自分がしたいと思うことをやってもらうようにと、工夫しながら人に伝えて、お礼を伝えて、を繰り返しています」
頭をフルに回転させて、相手が気持ちよく動けるように伝えると言います。

「人は幸せになるために、使命を持って生きている。今、私には、〝こんな病気か〟と思いながら、挑もうとするワクワク感があります。今を一生懸命生きようとする人のことは、周りも助けてくれますね」と。

今は、両手が動かせず、頸部の筋力も低下して、首にサポーターをつけている状態。でも、足は動き、話すこともできます。
そこで、足を使ってパソコンを動かし、音声入力機能で文字を入力、オンラインでスタッフと会議も行い、仕事をしています。

「セミナーや看護学校で、講師として話す機会もいただくようになりました。これまでに1,000人くらいに向かって話してきたでしょうか。病気にならなければなかった貴重な体験をさせていただいています」

同じ病気で悩み、苦しい思いをしている人から「こんな病気になっても、生きたいと思う人の気持ちがわからない、あなたは何なのですか」と言われたそうです。
「私には、私が生きて死んでいくまでの時間を見ている人がいます。その大切な人に、生き切った姿を見せるということを目標にしています。どうせなら、自分らしく生きる姿を、大切な人に遺すために今を生きませんか？」

「とはいっても、ちょっとしんどいな、とか、もうやめちゃいたいな、とかよぎることはあります。でも目の前にやることがあるから持ち上がります。その原動力が、私にとっては仕事ですね」

「写真の仕事はとにかく楽しい」と石谷さん。
来年9月に30周年を迎える写真館では、日本が誇る着物文化の良さを写真を通して伝える方法を思案・計画中です。
また、「年を重ねても、より元気になれるお手伝いを」とシニアの方がいつでも笑顔になれるような取り組み等も考えています。

「病気になって動かせなくなった部分もありますが、より一層動けるようになった自分もいます。それが楽しいんです。一人でも多くの人を励ますことを毎日やっていきたいですね」

いや増して、夢を広げる石谷さんです。

「幸せのヒントを日々送り続けたい」と石谷さんが願う、大切なスタッフと一緒にスタジオにて撮影

プロフィール

いしたに まきこ

八王子市在住。『株式会社マキ・コーポレーション』代表取締役。32歳で写真館を開業。現在『スタジオ・アン 八王子南館』『スタジオ・アン あきる野館』『スタジオ・アン イーアス高尾館』の3店舗を経営。2018年、筋萎縮性側索硬化症（ALS）と診断される。病が進行する中、家族や訪問看護、ヘルパーの介助を受けながら仕事を続ける。また、ALSのセミナーや看護学校で講師として自身の思いの発信もしている。完治を祈り、周りを励まし、夢を広げ、前進する姿に元気をもらう人が多数。写真館「スタジオ・アン 八王子南館」の公式WEBはこちらから！

プレイスメイキング とは
そこに行ったら人と出会えて、つながって、ワクワクドキドキ楽しい時間が過ごせて、笑顔が広がって、まちが盛り上がる何かを作り出せる。そんな空間を、私たちが普段暮らすまちの中に作る取り組みが「プレイスメイキング」。

紙上プレイスメイキング とは
『もしもし』紙上が、そんな「プレイスメイキング 」の場になりたい。『もしもし』に触れることで、新しい人とつながったり、ドキドキワクワクの思いが広がったり、新しい発見があったり、このまちで暮らしていることを嬉しく思ったり、安心したり、心が豊かになったり。そして人に優しくしたいなと思えてきたり。そんな『もしもし』を皆さんに届けたい、一緒にこのまちを楽しい場所にしていくきっかけになれたら。そんな思いを込めました。

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