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モリテツのキューバ・南米紀行2「巨匠を偲んで 2」 (ハバナその2)

『老人と海』。新潮文庫を開いて付近を散策しながら音読してみた。我ながら奇妙な姿だと思うけれど、きっと生涯の記憶として残るだろう。すれ違った村人が挨拶でもされたと勘違いしたのか手をあげてほほ笑んだ。

「テラス軒でビールをおごらせてくれないか」物語は、少年が老漁師サンチャゴを誘う場面から始まる。テラス軒は通りの向こうに見える。眩しい陽を反射して白く光る洒落た二階建て『La Terraza de Cojimar=ラ・テラサ』。青い看板もなんとなくセンスを感じさせる。

さっそく行ってみよう。昼下がりの今、店に客はいない。社交的だったヘミングウェイは愛艇「ピラール号」を操船して沖合で深海釣りを楽しんで下船した後はここで一杯やるのが何よりの楽しみ。カウンターに座り込んで地元の漁師たちと賑やかに歓談、そこから物語は生まれた。

この海域はホオジロザメの生息域である。84日間一匹も釣れず、テラス軒で仲間にからかわれていたサンチャゴ老人が少年に見守られて一人出漁、仕留めたカジキマグロを食い荒らす巨大鮫と死闘のあげく港に帰り着く話は、飲み友達グレゴリオ・フエンテスの実話が題材の一つになったともいわれいる。

ここには物語にちなんだ額が壁にたくさん飾ってあった。釣りを楽しむヘミングウェイやホオジロザメを捕獲した時の模様、さらにはグレゴリオ船長の肖像画も。少年は、ラ・テラサのオーナー、マンディトの息子がモデルとも伝えられている。

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