TamaHito 43
千葉 有季 さん
体の奥に意識を向けて 心の声に耳を傾ける
体も心も和らいで整い、余裕が生まれる心地良さ
「常に目標を掲げ全力で走っていた」千葉さん。幼い頃から本気でピアノに向かい、ずっと練習を重ねてきていたものの、高3で方向転換。「弁護士を目指そう!」と、大学に進学します。そして卒業後は弁護士になる夢を追い続け、アルバイトで得たお金を学費にあてて予備校で学び、司法浪人を6年続けました。けれど、28歳で、「このままでいいの? ここで一旦やめて社会人になろう」と一般企業に就職することを選びます。
その中で、さまざまなストレスと長時間のデスクワークによる体と心への負担が重なり、めまいや肩こり、首こり、冷え性に悩まされるように。
「さらには、満員電車に乗るのが怖くなったり、夜寝る前に全身が震えたり、過呼吸を起こしたり、自律神経失調状態といわれる症状も出てきたんです。少しでも良くなるようにと、脳神経外科、カイロプラクティック、整体、マッサージと渡り歩きました。でも、根本的な解決にはならず、原因もわからなくて。そんな時、知人の紹介で診ていただいた整形外科医から『あなたは病気じゃない。その不調は筋肉が緊張しているのが原因です。筋肉をほぐしなさい』と言われたんです」
当時、ヨーガがブームで、千葉さんは、「筋肉かあ、なら、ヨーガかなあ?」と、通勤途中の駅前にある区民センターの和室で開催されていた教室を訪れます。
「年配の女性の先生が畳の上に座ってらして、穏やかな表情で『おしゃれなヨガウエアはいらないわ。体を締め付けないゆる~い服とバスタオルを持って来ればいいのよ』と言われ、ホッとしたのを覚えています。で、体験してみたら『あなた、体は硬いけど、心が柔らかいから大丈夫』と。そして、体も心も穏やかに整い、安心感に包まれる心地良さが嬉しくて通うようになったんです」
その時、千葉さんは32歳。以来18年。その先生のもとで無理なく続け、6年前からは指導も行うようになりました。
ヨーガで心身の声を聞き、ストレスのない生き方を
「過去の記憶や体験に基づいて、人の心は揺れ動き、苦しいほど振り回されることもあります。そんな心の動きを鎮め、穏やかな心で生きていくための術を教えてくれるのがヨーガです」
穏やかな心に向き合うためには、体が落ち着いていないとできないと千葉さんは話します。だから、体の奥の動きまでも感じられるように意識を向け、その声を聞いていく。そのためにも余計な力みや癖に気付いてやめていくことが大切になってきます。
写真撮影でお邪魔した千葉さんのモーニングヨーガのレッスンでは、体を動かし、元の状態に戻した時、その度に「は~い、力を抜いて。体の面積、高さを感じてください。血流を感じてください」と静かな声で生徒さんに語りかけていました。ヨーガをしているわけではなく、カメラを手にしている私でしたが、リラックスして、体の奥の声が聞こえてくるような感覚に包まれ、なんとも心地よい体験ができました。
体に不自然な力を入れていると、心にも緊張が生まれます。それは、自分自身を知らず知らずのうちに、固め、ストレスを生んでいるのかもしれません。
「実は、本来の私は短気なんですよ。沸点が低い。でも、ヨーガで心が整い、頭がクリアになるので冷静になれて判断力が出てきました。なので、昔に比べてずいぶん、怒りを表すことなく穏やかに過ごせるようになったんです」
千葉さんが掲げる活動名は『Linp』。「Live in Natural Postures」の略です。余計な力が抜けた自然体、転じて、自然体でいること、ありのままで生きること。その思いがこめられています。
今、長く続くコロナ禍で、これまでにないストレスに悩む人が多くいます。だからこそ、自分の体と心に目を向けることの大切さを伝えたいと千葉さんは願っています。
千葉さんの柔らかな声に、心も体もほぐされます
プロフィール
1971年生まれ。3歳まで府中市、4歳で八王子市松が谷へ。以来、ずっと松が谷で育つ。筋肉の過緊張による体調不良がきっかけで2004年にヨーガを始める。筋肉の緊張には心の緊張も関係することに気づき、心を穏やかに保つ伝統的ヨーガの教えを学ぶようになる。少しでも多くの人にヨーガの心地良さ、心身の力を抜くことの大切さを伝えたいとの思いから2015年にヨーガクラスを開き、地元多摩を中心に活動を展開中。2020年にはオンラインクラスも立ち上げ、都内23区や他県からの参加者もいる。スワミ・ヴィヴェーカーナンダ研究財団認定ヨーガ教師、シニアヨガ指導者養成講座修了(UTL)、ヨガ解剖学講座(AKIC)修了、一般社団法人日本ホリスティックヘルスケア協会ヨガ安全指導員。『Linp』https://www.linp.info