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モリテツのスペイン紀行28 「さよならカタルーニャ」(バルセロナその7)

 

バルセロナの次の滞在地が、西に250㌔のサラゴサはほぼ決まり。問題はそこからどう進んでイベリア半島を制覇するかだ。宿のロビー兼食堂でガイドブックを広げていると、ケイル・美帆嬢、クレマンさんらも寄ってきた。夕食時。この日もデラックス・ボカティージョに赤ワイン。

サラゴサからサン・フェルミン祭り(牛追い祭り)で名高いパンプローナ経由でビスケー湾沿いのビルバオに出るつもりと予定コースを話すと、ケイル君が「サラゴサまで来ながらピレネー素通りはないでしょう。フランス・スペイン国境のあの素晴らしさを見逃すなんて…」と両手を広げて大げさに肩をすくめる。

「私たちも3日後には出発よ。せっかくだから、山に詳しいケイルをガイド役に従ったら」と美帆嬢。ああ、またまた意志薄弱ぶりを露呈して胸中グラッ。確かにピレネー山脈などここを逃せば一生行けない。共に行動するかはともかく良きヒントには違いない。

すると、フランスのクレマンさんも「ピレネーなら私もぜひ」と言い、エミリアまで「大学の旅行で行ったことあるの。私も乗るわ」と加わった。

中2日も空いてしまった。さて、どうしよう。バルセロナ入りした時から気になる塔があった。宿近くから望める円筒形の造作物。一体、何なのか? 暇に任せて1㌔余を歩いて現場に行ってみた。接近してみると予想もせぬ建物。

調べてみると、これは「トーレ・アグバール」(Torre Agbar)という名の市水道局のビル。フランスの建築家が設計。奇岩のモンセラットと噴き上げる水をイメージしたデザインとか。高さ144.4㍍。38階建ての高層だ。壁面を見ると、細かいカラフルなガラス窓で覆われ、さらに無数のLEDライトが施され、金曜日と週末の夜は、煌びやかな光でライトアップ。

美術眼のない小生には、先日観た曲線美で知られる世界遺産ガウディの「カサ・バトリョ邸」よりも、よほど理解しやすいように思えてしまう。

中心部に戻ってデパートに寄った。地下の食品売り場は見歩くだけで飽きない。これはイベリコ豚の生ハムらしい。こんなけったいなものにナイフを入れると、あの綺麗で美味な逸品が飛び出すのか。水産物も豊富。見たこともないこれまたけったいな魚類がずらり。

土産物屋も個性豊か。日本の観光地のようにどこの店も同じ品を並べて客引きすることはなく、小さな露店が珍品を持ち寄る。ここは銀食器を多めに揃え、こちらは小物のアクセサリー。帰国するなら買いたいけれど、ここはガマン。

さらに歩いていると、なんとこれは温度計なのか。高さ22㍍のカンコテット温度計。半世紀以上も前に作られたという。目盛りは40度まで。欧州の近年の猛暑はそれを超えそうな気もするが、それにしてもバルサの気候も空気も何となくしっくりくる。湿感というか空気感が日本に似ている感じなのだ。

地中海沿いのこの地は乾燥しきったスペインの中では異質。政治や歴史だけでなく、人々の顔も気質もマドリードなどとは対極にあるといい、それだけ独立心も強い。

カタルーニャの人は貯蓄好きの勤勉家。当然、早朝から勤めに出る働き者が多いとか。そんな風土が以心伝心、肌にフィットするのだろうか。

名残惜しくても、さよならするのが旅の定め。またいつか訪れることもあるだろう。さよならバルセロナ…、そんな思いを胸に、宿に近いフランサ駅に列車チケットを求めに出かけた。

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