Tama Hito 54
橋場 万里子 さん
まちの歴史を掘り起こし、その豊かさを伝えていきたい
目指すのは、地域まるごと博物館
2020年6月からの大規模改修を経て、この3月にプレオープンしたパルテノン多摩。そのミュージアムで学芸員を務めるのが、橋場さんです。
「歴史が好きで、博物館が好きで、見せることが好き」な橋場さんが〝学芸員〟という職業に出会ったのは高校生の時。
「自分の性格から、社会と接点があった方がいいなと思っていたので、学芸員になりたい!と、大学も選びました」
卒業後は地方公務員を2年。
「その間も博物館学の研究会に参加。博物館で働く方の話を聞くほどに学芸員として働きたい思いが強くなりました。そして、〝一生に一回のこと、挑戦しよう!〟と退職。大学院で勉強しながら人脈を広げ、きっかけを探しました」
2000年のリニューアルにあたり、パルテノン多摩歴史ミュージアムでミニ企画展をやれる人を探していました。そこで縁あって橋場さんが担当することになり、以来、パルテノン多摩で学芸員として業務を続けてきました。
「多摩ニュータウンは造られた町で、歴史がないと言われますがそんなことはありません。この20年の間に、この地に根を持つ多くの方の話を聞いて、その方々のこの地への思いに触れて、それを伝えていかなければという思いを強く持ちました。歴史や人々の記憶を掘り起こし、耕し続けることで、この地の豊かさが発掘できると思います」
目指しているのは「地域まるごと博物館」。ミュージアムで地域を知る視点を身につけて、地域に出て行ってその魅力を見つけていこうというもの。
「新しくオープンしたふるさと資料館やこれから開館する中央図書館などさまざまな場所や人とも連携し、そして市民学芸員の皆さんとともに、いろいろなことがやれたらと考えています」
多摩市の歴史や伝承を連載、本になりました
橋場さんは、唐木田にあるからきだ菖蒲館の広報紙「ハロー」で、2017年からコラム「多摩の歴史さんぽ」を連載。今回、同館の開館10周年記念で、連載の30話が1冊の本にまとめられました。
「地元の身近な歴史を現地に即してわかりやすく紹介したいとのことで、その都度のテーマは好きなことでいいですよとおっしゃっていただいたので、歴史ミュージアムの企画展の内容とクロスさせることもできました」
編集も有志が手作りで行い、気軽に手に取れる1冊に。多摩市の豊かな歴史や伝承が、よくわかります。
「展示は一方的なものではなく、展示を見る人自身の内面や人生経験との対話でもあります」と橋場さん。
プロフィール
埼玉県出身。多摩市在住。お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士前期課程修了。2000年、パルテノン多摩歴史ミュージアムのリニューアルオープン以来、学芸員としてさまざまな企画の立案、展示準備を行うとともに、地域の歴史の掘り起こしや出張講座など、市民との協働も大切に活動する。からきだ菖蒲館の広報紙「ハロー」に2017年から「多摩の歴史さんぽ」を連載。この春、同館開館10周年記念で、一冊の本として刊行された。
パルテノン多摩 TEL.042-375-1414
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