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モリテツのキューバ・南米紀行1「巨匠を偲んで(1)」(ハバナその1)

 夢とまではいかないが、この船着き場に立つことを何度思い描いただろう。小説を読んで想像していた通りの波静かな海辺の情景。ここはヘミングウェイの名作『老人と海』の舞台となったコヒマルの漁村である。目の前で若い漁師が網を投げて漁をしていた。岸壁では少年たちが竹竿を垂れて釣りを楽しんでいる。

 小説が書かれた1950年代から70年経とうとしているが、当時の素朴で鄙びた様子は色濃く残っているように思える。

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 日本から太平洋を越えて12500㌔、キューバにやってきた。シカゴ近郊で医師の息子として生まれ、イスパニアをこよなく愛して旅を重ねたノーベル賞作家アーネスト・ヘミングウェイ(1961年、61歳で没)の終の棲家は、キューバの都ハバナである。スペインに続く紀行として、この国はもっともふさわしいかもしれない。

 日本からの直行便はない。羽田からロサンジェルスへ直行。メキシコ経由でやってきた。その間のことは後に回すとして、まずはコヒマルをもう少し案内しよう。

 ハバナ市街地から東へ10㌔。車で10分。波止場の向こうに見えるのはスペインが17世紀に立てた要塞。村は世界的に有名になったが、名舞台をありのままの姿で残そうという村人の心遣いが随所に感じられる。観光客向けの看板や土産物屋はなく、宣伝臭ささが一切ない。6本の円柱をあしらった円形の公園がぽつんと立ち、真ん中に胸像を飾って巨匠を偲ぶだけである。その石段ではパナマ帽の老人がギターを奏でていた。

#モリテツ #森哲志 #紀行 #キューバ #南米

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